伝統空手とフルコンタクト空手

空手には「伝統空手」と「フルコンタクト空手」という大きな2つの流れがあります。

空手と聞くと、相手と対峙して戦う「組手」のイメージが強いと思いますが、伝統空手では一人で行う仮想戦である「形」も重視されます。また、伝統空手では組手においても寸止めがルールとして定められていますが、フルコンタクト空手では相手への直接打撃を行います。私たち剛心会は伝統空手の「剛柔流」に属する会派の1つです。


剛柔流について

そもそも空手道は中国拳法をその源流としています。日本から沖縄に伝承された格闘術「手」と、中国から伝わった拳法が合致して生まれた「唐手」と呼ばれた武道から発展し、現在の空手となっています。なお、広大な中国の北部の拳法は主として沖縄の首里市に伝わって「首里手」(しゅりて)として、南部の拳法は那覇市に伝わり「那覇手」(なはて)として、それぞれの特徴を持って発達しました。

このような歴史を持つ空手道ですが、剛心会の属する剛柔流空手道は日本の四大流派の1つに数えられる、歴史と伝統を誇る流派です。現在の松濤館流は首里手を、剛柔流は那覇手を代表する流派です。剛柔流空手道の流祖は、沖縄の宮城長順先生(1888-1953)で、東恩納寛量先生から学んだ那覇手と、単身中国に渡って習得した拳法、双方の長所に独自の呼吸法「息吹」を加え、理論と実技を科学的に体系化し「剛柔流」と名付けました。

流祖宮城長順先生から、我が国における普及発展のすべてを任せられた、先代会長の山口剛玄会租(1909-1989)は、昭和25年に全日本空手道剛柔会を創設し、全世界に剛柔流空手道を広めました。現在も平成2年1月会長に就任した山口剛史最高師範のもと、全世界の会員が心を一つにして空手道の発展のために研鑽を重ねています。

剛柔流の特徴
1.呼吸法(息吹)

心身の統一をはかって意識的に呼吸を調整しつつ、体内諸臓器を活性化させ、一分の隙も無い自己の実現を目指します。

2.陽(剛)陰(柔)天然の理

剛柔流の技は、剛と柔の無限の組み合わせによって成り立っており、剛の攻撃に対しては円運動を主とした柔の技によってこれを制し素早く剛の攻撃に転じて勝利を得ようとするものです。

3.接近戦に適した自由組手

剛柔流の自由組手(自由な攻防を行う練習法)は接近戦を旨としており、転身自在な“猫足立ち”と連続攻撃技によって自己を優位に導きます。

4.無事の哲学

剛柔流の精神的根源は流祖宮城先生の遺訓「人に打たれず人打たず、事なきをもととするなり」の人生哲学です。

剛柔流の形

空手の「形」の動作には、小さな動きにいたるまで一つ一つに攻防の意味が秘められています。 定められた演武線の中で心身鍛錬と相手を仮想して戦う武術として、各流派の達人が長年 錬鑚して考案され現在に伝えられてきました。


三戦(サンチン)
剛柔流独特の呼吸法(息吹)で全身の筋肉を締めて筋肉強化と精神修養(立禅)を目的としておこなう剛の基本形です。
転掌(テンショウ)
三戦が剛の形に対して半陽陰息吹で手首を柔らかく使い分け、円の動作で攻防する柔の基本形です。
撃砕第一(ゲキサイダイイチ)
流祖宮城長順先生が体育の目的で編み出され、受け、突き、蹴り当て等が総合的に組み込まれたバランスの良い初歩の形です。
撃砕第二(ゲキサイダイニ)
撃砕第一とほぼ同じ手順で開手の受けや猫足立ちを練習する形です。
最破(サイファ)
外し技、打ち技が多く鷲足立ちで蹴るなどバランスを取ることが難しい剛柔流でも最も短く、異なる立ち方が多い形です。
制引鎮(セイエンチン)
蹴り技が無く、四股立で手技の技法が多い左右対称の形です。
四向鎮(シソーチン)
開手においての関節折り技を主とし、腰の回転でキレを練習する形です。
三十六手(サンセール)
前屈立ちを主とし、前蹴りからの攻撃が多く投げの技のある形です。
十三手(セーサン)
技の種類が多く左右対称の動作が無い、変化に富んだ形です。
十八手(セーパイ)
円の動きが多く技の連続動作を意識して同時に攻防を行う打ち技の多い形です。
久留頓破(クルルンファ)
小さな腰のキレでの攻防技や、肘を使った外し技、攻撃技が多く大胆な投げ技がある開手を主とした形です。
壱百零八手(スーパーリンペイ)
連続動作の中で同じ技の繰返しが多く、演武線は複雑で二段蹴りを用いた最も長い形です。